一匹狼くん、 拾いました。弐
「「ミカ」」
公園の入口の周りにある草むらの後ろから、結賀と仁が顔を出した。
「は? お前らなんでいんの?」
頭から手を離して俺は言う。
「ごめん、ミカにバレないように足音立てないようにして追ってきた」
頬をかいて仁はいう。
「付いてきたらもう会わないっていったのに?」
「ミカが会おうとしなければ、俺らが会いに行くし。……それにさっきのミカ、今にも死にそうで怖かったから」
「俺も仁と同じ理由。さっきのは本当に今から死にに行く奴の言葉にしか聞こえなかった」
「別に死にに行こうとはしてないけど」
「……けど?」
仁が俺の隣にあるブランコにまたがって首を傾げる。
「逃げたくなった。なにもかもから」
「じゃあ逃げちまうか、一緒に」
歯を出して笑いながら、仁はとんでもないことを言い放った。
「えっ」
思わず頷いてしまいそうになった。逃げたって何も解決しないのに。
「なんてな。逃げて何もかも解決するなら、とっくに逃げてるよな。……ミカは偉いよ、すげー偉い。俺と違って、現実から目を背けてないんだから」
俺の隣にあるブランコにまたがると、仁はそう言って顔を伏せた。
「……お、俺は現実と向き合ってなんかない」
「向き合ってるよ。ミカなりにちゃんと親とも葵とも向き合おうとしてる。じゃなきゃアルバム見てあんなに取り乱さないだろ」
「確かに。もう褒めちゃいたいくらい現実と向き合ってるよな」
結賀が俺と仁の間に来て笑う。
「うっ、うっ……」
涙が頬を伝う。
それは拭っても拭っても溢れ出して、俺は気がつけば赤ん坊のように悲鳴を上げて泣きじゃくっていた。
「ミカ、いい子」
仁が俺の頭を撫でて囁く。
「うっ、うっ……仁、結賀、ごめん。おっ、俺、お前らといてもダメな気がして。俺は仁みたいに、親に見切りを付けられないから」