一匹狼くん、 拾いました。弐
「別に俺は親に見切りなんてつけられてないけどな。……逃げただけだし。結賀もそうだろ?」
「……まぁ。俺は母親に逃げられたんだけどな」
自虐するみたいに結賀は言う。
「ミカ、別にさ、親に見切りなんてつけらんなくてもいいんだよ。ただ俺達はお前の親よりミカを幸せに出来る自信があるから、ミカがいいっていうなら、俺達と一緒にいて欲しい」
「でもそんなことしたら、俺、すっごいずるい奴みたいじゃん。……幸せ貰えるだけ貰って、なんも返さないなんて」
返せるものなんて俺には何も無い。それなのに仁達に寄りかかって、居候なんてしたらありがた迷惑もいいところだろう。
「何にも返してないわけねぇだろ。ミカは十分役に立ってる。家事の手伝い自分からしてくれてるし、昨日だって俺のこと励ましてくれたじゃん」
「そうだけど、俺っ、ただの居候じゃん」
「そんなの気にしなくていいから、ミカと暮らせること自体が俺にとってメリットだから。……どうしても無理になったらいなくなってもいいから、それまではいろよ」
「……じっ、仁のバカ」
優しすぎる仁に腹が立って思ってもいないことを口にしてしまう。
「え、なんで俺罵倒されてんの?」
「……もの好き」
「ハッ。もの好きで結構」
仁は俺の真鍮を察したように声を上げて笑った。
「ミカはこれからどうしたい?」
泣き止んだ俺を見ながら、結賀はいう。
「……親父のとこ行きたい。あと、孤児院に俺の本当の親のこと聞きに行く。……そん時に楓とも話せたら話したいかも」
「ん。りょーかい」
「まさか楓と復縁する気か?」
仁が眉間に皺を寄せる。
「ははーん。仁はミカを取られるのが嫌なんだな?」
仁の肩に腕を乗っけて、結賀は笑う。
「だ、誰もそんなこと言ってねぇし! でも、ミカは俺らのだ。……あんなクソ親に脅えた女のもんじゃねぇ。まぁ、ミカがそんな女でも好きだって言うなら、しょうがねぇけど」
「……俺、楓とより戻さねぇよ」
「え、なんで? 好きなんじゃねぇのかよ」
眉間に皺を寄せて仁は言う。
「まぁそうだけど……俺、あいつに虐待のこと隠し続けてたから。そんな奴に復縁する権利なんかないだろ。それに俺、父親に反抗してくれる楓が好きだったから。……まぁこんなの俺のわがままだけど、でも俺は内気で殻に閉じこもってた俺を外に引っ張り出してくれた楓が好きだったから」
仁が俺の頭をポンポンする。
「そっか。俺もそれが懸命だと思うぞ。父親に従う奴と付き合うのはなしだなし」
「……うん」
俺は浮かない声で頷いた。