一匹狼くん、 拾いました。弐
俺はその後、すぐに親父に会いに行った。
刑務所と面会室がガラスでしきられてて、そのガラスの真ん前に、銀色のテーブルとパイプ椅子が一つ置かれている。
「……今日はどうしたんだ、俺の商品」
刑務所にいる親父は、面会室にいる俺を見るなりそう言った。
「はっ、はっ」
心臓がバクバク音をたてて、呼吸がどんどん浅くなる。
頭が痛くなって、額から冷や汗が流れて、身体からみるみる力が抜ける。
「俊平、どうした? 俺が怖いか、まだ。もう虐待から解放されて半年だっていうのに。……やっぱりお前はいつまでも俺の奴隷だな」
「……うっ、うるせえ!はぁっ、はあ」
「ミカ、ゆっくり深呼吸して。大丈夫だから」
仁が俺の背中を撫でて囁く。
「すー、はー。はー。……ありがと、少しマシになった」
「情けないな。独りじゃ俺とろくに会話もできないなんて」
「ミカをそんな風にしたのはお前だろ!」
仁はテーブルを拳で叩いた。
「ああ。こいつは俺の犬だからな」
仁の態度に怯えもしないで、平然と父さんは言う。
「……俺は父さんの犬じゃねえ。血も繋がってないくせに、俺を支配しようとすんな」
父さんが目を見開いて、口をあんぐりと開ける。