一匹狼くん、 拾いました。弐
「……露麻が話したのか」
歯を出して、父さんは悪魔のように笑った。あまりの気持ち悪さに鳥肌がたって、俺はつい自分の手を撫でた。
「……ああ。父さんは絵のモデルを探すためだけに何十件もの孤児院を回ったらしいな」
「ああ。孤児院でお前を見た時、人形かと思った。あまりに綺麗すぎて。モデルはこいつしかいないって、確信したんだ」
「こいつしかいないって思ったならなんで大事にしなかった」
「ミカがどんだけあんたに愛されたいと思ってたかわかってるのか!!」
結賀と仁が声を荒らげる。
「アハッ、アハハハハハ!!」
父さんは二人を見て、声を上げて笑った。
嫌な予感がした。今から言われることは、きっと酷いことだ。
「だって大切にしたら、逃げるだろう? モデルに、商品に意思なんていらないんだよっ!」
「いい加減にして下さいっ!」
刑務所のドアの前にいた女性警官が、声を荒らげて叫んだ。
「それが自分の子供に言うことですか!」
「こいつは子供なんかじゃない。ただの商品だ。それも、ただの商品じゃない。不良品で、ガラクタだ。ジャンクだジャンク」
涙が頬を伝う。不良品もジャンクもガラクタももう何十回も言われたはずなのに、涙が止まらなかった。
「……父さん、俺はっ、父さんの息子だよ?」
そうだよって言って欲しかった。嘘でもいいから、俺が大切だよって言って欲しかった。
「いや、お前は息子じゃない。お前が言ったんだろ、血は繋がってないって。お前はただのそこらへんの道端にあるゴミだ。それを俺が少し綺麗なとこがあったから拾って、育ててやっただけだ」
……もう無理。生きてるのがしんどい。疲れた。