一匹狼くん、 拾いました。弐
「ミカ」
仁に声をかけられ、俺は顔を上げた。仁の隣には、結賀に廉と伊織。それに葵もいる。
「大丈夫か?」
仁が俺の顔をのぞきこむ。
「悪い、一人にしてくれるか」
「ミカ、俺にはそれ、一人にすんなって意味に聞こえんだけど」
「……なんで」
「気づいてないのか? お前、すっごいつらそうな顔してるぞ」
眉間にシワを寄せて、仁は俺の顔を覗き込む。
「……別にいいんだよ。親父が俺を道具扱いしてたのなんて。五歳の時からそうだし、今更それが辛いとか、慣れすぎて全然思わないし。
……でもさ、さすがに、偽装は無いと思って」
仁から目を逸らし、顔を伏せながら俺は言う。
「……親父が俺を従順な犬にするために楓を殺すならまだ分かったんだ。
でも、楓を殺さないのは正直訳わかんなくて。
……親父はあの日、俺を殺すつもりだったと思うんだ。あるいは、俺を意志を持たない人形みたいな奴にするために、死にかけさせたんだと思う。親父にとって俺は道具だから。
でも、楓はあの日生かされたんだよ!それは車が止まったからじゃなくて、親父が生かしてもいいって考えたんだ!
赤の他人のあいつは殺さなくていいって、傷つけなくていいって考えたのに、俺のことは従順な犬になるまで、死にかけるまで痛めつけていいって、そう判断したんだよ!!
この差ってなんなんだ? 血が繋がってんのに、俺は他人以下か?
五歳の時ゴミ以下って言われて、そん時はその意味をまるでわかってなかったよ。
怒ってる親父の言うことを聞くのに必死で。
俺、そう言われたことずっと忘れてたんだ。……考えないようにしてたんだ。自分が代わりのきく道具なんだって、愛想つかされたら捨てられるんだってこと。
でも、今日死体の偽装したって聞いて、自分が他人どころか、ゴミ以下だと思われてんのすごい実感して、辛くて」
「ミカ、……お前は、立花に嫉妬してるのか?」