一匹狼くん、 拾いました。弐
友情と恋愛は違う、ということだろうか。
どんなに仲が良くても、決して恋には発展しない友情が、結賀と伊織にはあるのかもしれない。
「仁は全部知ってるのか?」
「ああ。俺が仁を華龍に入れる時に、全部話した。俺や仁や伊織に限らず、華龍は過去に何かしらあった奴ばっかなんだ。……俺は多分仁ほどじゃねぇけど、人のこと疑ってかかっちゃうとこはあるから、それなら絶対に裏切らないって確信を持てる奴を集めたいと思って」
それで結賀は、俺を華龍に勧誘したのか。
「結賀、おじさんの面倒みんの大変じゃないか?」
高校二年生が大人の面倒を見るのがどんなに大変なのかなんて、考えるまでもないだろう。
「ああ。精神が不安定になった時はちょっと大変。治んのに、半日以上かかるし。けど、それでも俺は、父さんが好きだから、多分死ぬまで、父さんの面倒を見るんだと思う。病んでた時はあんまり喋れてなかったからキツかったけど、それでも時々ごめんなって言ったり、俺に愛してるって言ってくれたりしたから」
「病院は?」
「行ってるよ。でも原因が母親だから、母親と和解でもしない限りは、ちゃんと治んないと思う」
「……そっか」
「駆け落ちのことがきっかけで、母親と血が繋がってる俺に手をあげられるようにならなかっただけまだマシだと思うけどさ、でも時々、本当にメンタルズタズタになる。うなされてるだけならまだしも、急に泣かれたりすると特に」
額に手を当てて、うなだれた様子で結賀は言う。
うなされているだけなら、起こせば直ぐに解決しそうだけど、急に泣かれたら、どう対処するのが正解なのかわからないよな。それに、忙しくて泣いて欲しくない時に泣かれたりなんかしたら、本当に嫌になるだろう。
「結賀、俺も何かあれば手伝うから、なんでも言って」
「ああ、ありがとう。ごめんな。ミカも自分のことで大変なのに」
「……そんなの気にしなくていい」
「……ありがとう。ミカが親友でよかった」
頭から手を離して、涙を拭いながら、結賀は笑った。
「うん」
俺は自分の腕の上にあった結賀の手に、そっと自分の手を重ねた。
親友という言葉を聞いて、つい仁のことが頭に浮かんだ。
仁は大丈夫なのだろうか。父さん、仁に『スイーツの作り方がロボットみたいだ』って言ってないといいけど。