一匹狼くん、 拾いました。弐
俺は母親が好きなのを認めたくなかっただけだった。母親に、人に期待してるのを、認めたくなかっただけだった。
認めたら、自分がとても惨めな気がしたから。
自分が愛に飢えてる哀れで可哀想な子供だなんて、思いたくもなかった。
だってあんな母親、愛を求めるのも馬鹿らしい。
嫌われるようなことをした覚えは一切ないのに、突然無視されて、邪険に扱われて。
散々蹴られて、殴られて。
そんなことをした母親に、あんな低俗な母親に愛を求めるなんて、馬鹿らしいにも程がある。
……それなのに、俺は。
認めたくなかったけど、それでも俺は確かに飢えていて。
愛に飢えていたから、あの日伊織の前で泣いてしまったんだと思う。
「はぁ……結賀、ミカ、俺が母親から逃げようとしたら、ちゃんと止めろよ」
ため息をついて言う。
会いに行くしかない。……会ったら何を言われるかって考えるだけで、頭が痛くなるけど。
「何当たり前のこと言ってんだよ。なぁ、ミカ?」
「うん、ちゃんと止める」
俺の言葉を聞いて、二人は言う。
「でもまぁ仁の家行く前に、立花と話しないとだよな。それに、そろそろ流石に蓮と伊織に葵の話しねぇと。最近短期間で色々ありすぎて、あいつらにろくに話出来てないから」
ミカを見ながら、結賀は言う。
「伊織にも言ってないのか?」
「あのなぁ、せっかくお前といるのに、俺が伊織に電話すると思うか?」
さらっととんでもない発言をされた。
「え。……結賀、ミカには」
俺達の友達以上恋人未満な関係を、ミカに明かしてよかったのだろうか。
「もう言った。隠すの面倒だったから」