一匹狼くん、 拾いました。弐

 俺は母親が好きなのを認めたくなかっただけだった。母親に、人に期待してるのを、認めたくなかっただけだった。

 認めたら、自分がとても惨めな気がしたから。

 自分が愛に飢えてる哀れで可哀想な子供だなんて、思いたくもなかった。

 だってあんな母親、愛を求めるのも馬鹿らしい。

 嫌われるようなことをした覚えは一切ないのに、突然無視されて、邪険に扱われて。

 散々蹴られて、殴られて。

 そんなことをした母親に、あんな低俗な母親に愛を求めるなんて、馬鹿らしいにも程がある。

 ……それなのに、俺は。

 認めたくなかったけど、それでも俺は確かに飢えていて。

 愛に飢えていたから、あの日伊織の前で泣いてしまったんだと思う。


「はぁ……結賀、ミカ、俺が母親から逃げようとしたら、ちゃんと止めろよ」

 ため息をついて言う。

 会いに行くしかない。……会ったら何を言われるかって考えるだけで、頭が痛くなるけど。

「何当たり前のこと言ってんだよ。なぁ、ミカ?」

「うん、ちゃんと止める」

 俺の言葉を聞いて、二人は言う。

「でもまぁ仁の家行く前に、立花と話しないとだよな。それに、そろそろ流石に蓮と伊織に葵の話しねぇと。最近短期間で色々ありすぎて、あいつらにろくに話出来てないから」

 ミカを見ながら、結賀は言う。

「伊織にも言ってないのか?」

「あのなぁ、せっかくお前といるのに、俺が伊織に電話すると思うか?」

 さらっととんでもない発言をされた。

「え。……結賀、ミカには」

 俺達の友達以上恋人未満な関係を、ミカに明かしてよかったのだろうか。

「もう言った。隠すの面倒だったから」

 
< 140 / 214 >

この作品をシェア

pagetop