一匹狼くん、 拾いました。弐
「はぁ……」
思わずため息がこぼれる。
「またアイツらのせいかよ」
仁がぼやく。
「なぁ楓……俺と、友達になってくれないか」
「え?」
「思い出してくれる保証がないことくらいわかってる。それでもいい。それでもいいから、俺は楓と友達になりたい。……虐待が解決した今なら、家のことを気にしないで、楓と一緒にいれるから」
父さんと母さんと一緒に話をしにさえ行けば、義母親のこともすぐに解決するハズだから。
「そうなんだ。……虐待、解決したんだね。よかったね」
涙を流して、楓は言う。
「ああ。楓は俺の家のこと、どこまで聞いた?」
「露麻さんから私が事故にあった理由を聞いた時に、虐待のことは一通り聞いたよ。だから、虐待が解決したことがわかって、本当によかった。……私ね、虐待の話を聞いた時、露麻さんに怒っちゃったんだ。命令されたとはいえ、やっていいことと悪いことがあるって。馬鹿なんですかっていって、露麻さんの頬を叩いちゃったの」
その言葉を聞いた瞬間、楓のことをとても愛しく感じた。
「はは。やっぱり、楓は楓だな。記憶がなくなってても、なんも変わってない。優しくて、芯が強い楓のまんまだ」
「……俊平、私も、俊平と友達になりたい。俊平のことを、思い出したい」
「そしたら、会いに来ていいかな。定期的に」
「うん、もちろん。あ、でも、虐待が解決したなら、私、夏休みが終わったら東京に戻ろうかな。俊平に会えるなら、孤児院と海の家で働くのを続ける理由もないし」
そういって、楓は笑った。
「そしたら、東京に戻ったら連絡してくれるか? メアドって変わってる?」
「ううん、変わってないよ。連絡するね」
「うん」
「今日はありがとう。俊平に会えてよかった。私、海の家に荷物置いたままだから今日はこれで失礼するね。またね、俊平」
「うん、また」
俺がそう言うと、楓は海の家の方に向かっていった。