一匹狼くん、 拾いました。弐

 親友だし、俺も仁を元気づけたいとは思うけど、今は俺が声掛けても、仁はきっと笑いかけてくれないから。

 俺はずっと、仁を親友だと思ってた。友達として、仁のことが誰よりも好きだった。でも仁は違って、俺を愛してくれてて。

 ……初めて聞いた時は本当にびっくりしたけど、ほんの少しだけ、納得もした。

 ずっと、仁がなんで俺にこんなに優しくしてくれるのかわからなかったから。

 仁は俺に優しすぎる。血流のところにいった俺にも、葵を嫌いになれない俺にも、怒らないし。


 その優しさは初めて出会った時からずっと変わらなくて、俺はそのことが、なんだか変だと思ってた。

 その優しさにちゃんと理由があってよかった。理由がない優しさほど、怖いものはないから。

 俺の義母さんは、優しかった。でも義母さんが俺に優しくしたのは、たぶん理由がない。

 仮にあったとしても、同情とかだろう。

 息子だからとかじゃない。だってあの日義母さんは、義父さんを庇ったから。

 息子だから、であって欲しかった。

 今更そんなことを思っても、どうにもならないけれど。

「はぁ」

 ……父さんと母さんに、義母さんと会う時間作って欲しいって言ってこようかな。

 仁のことは結賀に任せて。

 会いたくないなぁ。

 急に絶縁したし、義母さんのことが気にならないって言ったら嘘になる。

 でも、会いたくないんだよな。

 自分のせいで子供が家出をしたのに、電話の一つもよこさない義母さんになんて。
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