一匹狼くん、 拾いました。弐
《……分からないです。すみません、俊平様。忘れてください。野暮な質問でした》
「別に」
《俊平様が、奥様を嫌いになれるはずないですよね。……だって奥様だけが、俊平様に優しくしてくれていたんですから》
「……ああ、そうだよ。まぁ優しくした理由は、同情だったけど」
自嘲するみたいに言う。騙されたもいいところだ、本当に。
《違います。……それはきっと違います、俊平様》
「え?」
違うだって?
《奥様はもしかしたら、旦那様のことも俊平様のことも、同じくらい愛していたんじゃないですか。だからこそ、俊平様に旦那様の親友のことを話したのではないですか? 俊平様が少しでも、旦那様のとこを理解してくれたらいいと思って》
「は、そんなわけ……」
俺のことも、あの義父さんのことも、愛してるだって?
《大切な人には、仲良しでいて欲しいでしょう。旦那様は今でも俊平様を罵りますが、釈放されたら、もう少なくとも暴力は振らないと思います。誰も、二度も警察に捕まりたいなんて思いませんから。奥様はきっとそれに気づいていたから、俊平様に話をしたんだと思います。……俊平様と旦那様が、仲良くなったらいいと思って。まぁそんな願い、叶ったら奇跡のようなものですが》
「仮にそうだったならもう少し話し方を考えろよ!あんな言い方じゃ俺は、……義母さんが義父さんを庇ったとしか思えない」
『あの人は元からあんなだった訳じゃないの』なんて、庇ってるようにしか聞こえないだろ。
俺の味方じゃなくて、義父さんの味方だって言ってるようにしか聞こえないんだよ!!
「……俺は、信じないから。俺が家を出てから電話の一つもくれなかったアイツが、俺を愛してるなんて」
《俊平様のことが好きじゃないなら、奥様はどうして、拒食症になったんですか?》
「うるさい!」
思わず電話を切ってしまった。