一匹狼くん、 拾いました。弐

「はあっ、はぁっ!!」

 十六時五十九分に、家に着いた。駆け足できたせいで荒れた呼吸を整えながら、ズボンのベルトについてるキーケースをとる。キーケースの中にある家の鍵をドアの鍵穴に差し込んで、ドアを開けた。

 鍵を抜いて家の中に入ったところで、十七時を告げるアラームが、スマフォから鳴った。

 良かった、間に合った。

「遅かったじゃないか、俊平」

 玄関で靴を脱いでいたら、廊下のそばのドアが空いて、リビングから父さんが出てきた。

「別に、間に合ったんだからいいだろ」

「そうだな。ギリギリだけどな」

 靴箱に靴を入れて、廊下に足を踏み入れる。

「……俊平、お前、臭いぞ」

「え」

「甘い匂いがする。まさかお前、俺のいいつけを破ったのか?」

 父さんが鋭い眼光で俺を睨みつける。

「あ、甘いものなんか、食べてないっ!?」

 銀髪を勢いよく引っ張られる。

「この不良品が。誰も、“お前が甘いものを食べた”なんていってねぇんだよ」

 さーっと顔があおざめる。ヤバい。バレた。

「とっ、父さん、痛い」

「いいから来い」

 俺の髪を掴んだままの状態で、父さんは歩き出す。

 二階にある画材部屋の中に入ると、父さんはやっと足を止めた。

 部屋の床には絵の具のチューブが散乱していた。隅には筆の束と、パレットと水が入ったバケツが置かれている。中央には、キャンバスボードと、イーゼルが置かれていた。
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