一匹狼くん、 拾いました。弐
崩壊。
「俊平ー、たまには買い物でも一緒に行かない?」
夏休みになってから一週間くらいした頃、母さんがドアをノックして、自室にこもりっきりの俺に声をかけてきた。
どうやら俺を心配してるらしい。
「……買い物?」
ドアを開けて、俺は首を傾げる。
「そっ。夜ご飯買いに行きたくて。付き合ってくれない?」
「……わかった」
そういうと、俺は着ているパーカーのフードを深く被り直した。
「相変わらず、顔は隠すのね」
「……別にいいだろ。どこ行くの」
「……んー、家の近くのスーパーかな。何、どっか買い物行きたいとこでもあった?」
首をかしげ、母さんは言う。
「……いや、なんでもない」
母さんは俺への罪悪感を隠して、明るく振る舞っている感じがした。
元気がない俺を心配して、わざと明るくしている。
でも俺はそれが昔の母さんに戻ったみたいで心地よかったから、何も言わなかった。