一匹狼くん、 拾いました。弐
「いらっしゃい。俊平の同級生かな?」
岳斗と目が合うと、作り笑いをして父さんは言った。口は笑っていたけど、目は完全に笑っていなかった。
「はい。初めまして、矢吹岳斗です」
「そっか、岳斗くんか。……岳斗くん、申し訳ないけど、俊平をちょっと借りていいかな?」
ヤバい。父さんはたぶん、岳斗に見られないとこで、俺に暴力を振るうつもりだ。
「俺がいたら話ができないですか?」
「そうだね。少し、話しづらい」
何が話づらいだよ!! 岳斗がいたら、話そうとしもないくせに。
「俊平」
父さんが俺を見て笑う。口角は上がっていたけど、目は完全に笑っていなかった。「岳斗を追っ払え」と言っているのだろう。
嫌だ。もう父さんのそばにはいたくない。でも俺には、岳斗にこの状況を説明する勇気もない。
俺は唇を噛んで、岳斗を見つめることしかできなかった。
俺の腕を掴むと、岳斗は全速力で、廊下の隅にある階段を駆け上がった。
「おい、俊平!!」
「ミカ、お前の部屋どこだ?」
「に、二階の端っこ」
岳斗は二階の突き当たりにあるドアを開けると、大急ぎで中に入った。
俺が中に入ったところで岳斗は部屋の鍵を閉めて、ため息をついた。