一匹狼くん、 拾いました。弐
「はぁ、危なかったな。お昼にミカから話聞いてなかったら、騙されるところだった」
「……ごめん、岳斗。もしかしたら、岳斗も俺の父親から暴力振るわれるかもしんない」
「別にそうなったら、ここから逃げて俺の家に行けばいいし」
平然とした様子で、そう岳斗はいった。
岳斗は俺に、虐待のことを警察に通報すると言ってくれた。でも俺はそんなことをしたら、俺か岳斗が酷い報復を受ける気がして、その提案を断った。
提案を断って、自分から虐待から逃れるのを拒否した俺を心配して、岳斗は毎日のように家に来てくれた。岳斗が家にいる間は、俺は父親から暴力を受けなかったし、岳斗も傷つくことはなかった。
家の中が地獄じゃなくて、天国になった気がした。そうなったおかげで、俺は今なら楓に告白しても、楓が暴力を振るわれることはないんじゃないかと思って、楓に告白をした。
岳斗は俺と楓が付き合い出しても、変わらず毎日のように放課後は俺の家に来てくれた。
岳斗は楓と幼なじみだから、俺が恋人になったことに、少なからず嫉妬していたはずなんだ。でも岳斗は全然そんな素振りを見せないで、変わらず俺のそばに居てくれた。
でもそうなったせいで、父さんは放課後じゃなくて朝に虐待をしてくるようになって。俺は朝から飯を抜かれたり、暴力を振るわれたりするのが日常茶飯事になった。
でも岳斗にこれ以上相談をしたら、岳斗かその家族が虐待に巻き込まれるのは明白だったから、俺は相談をすることが出来なかった。