一匹狼くん、 拾いました。弐
高まる不信。
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――バキッ。
俺の話を一通り聞いた仁は、突然スマフォをぶっ壊そうとした。壊しきれなくて、ガラスカバーだけが割れて、ガラスの欠片が浜辺に落ちた。
欠片が指を掠って、仁の手から血が流れた。
「え、仁……?」
ぎょっとして、俺は目を見開いて仁を見た。
「え、じゃねぇよ! なんで、ミカがそんな目に遭わなきゃいけないんだよ。なんであんなクソ親に!! 何が躾だよ! 露麻も母親もクソだ! 本当に育て方を間違えている! なんで、どうしてよりによって父親があんな……っ!」
「……ミカお前は父親と露麻を殺しても世間から責め立てられないような扱いを受けている。それくらいあいつらは酷いんだ。それをちゃんと、胸に刻んでおけ。あいつらを一生許すな」
仁の指を撫でながら、結賀はいった。
「いてっ」
「馬鹿。頭にくるのは分かるけど、無茶しすぎ」
結賀はそうっと、砕けたカラスカバーを仁の手から奪い取った。
「悪い、結賀。はぁ。ミカ、警察行くぞ。義母親と話したら」
「え、でも、証拠ねぇよ」
俺の発言を聞いて、仁はより一層顔を顰めた。
「だからって黙ってたら、あいつの罪は重くならないだろ! ……それに、証拠はなくても、証人ならいるだろ。義理の母親と、露麻をこっちの味方につける」
「二人が味方しても、親父は」
あいつは変わらない。
「……あの行為のことをあいつが認めないなら、認めるまで何度だって警察に行くだけだ。何がなんでも認めさせる。罰を受けさせる」
俺の瞳をしっかりと見すえて仁は言う。仁の瞳が、底知れない怒りで燃え上がっているような気がした。