一匹狼くん、 拾いました。弐
江ノ島の病院なんてどこにあるのか分からないから、俺と結賀は駆け足で、仁を海の家まで連れていった。
孤児院に行っても良かったのだけど、両親がいる海の家の方が行きやすかったから、そうした。
母さんと父さんは仁を見ると、すぐに休憩室の鍵と、濡れたタオルと救急箱を貸してくれた。
血が床に垂れないように、仁の手にタオルを当てたり、床に気を配ったりしなから、俺達は休憩室に行った。
結賀が休憩室の中央に置かれたテーブルの前にある椅子に座って、救急箱を開ける。救急箱には包帯と消毒とコットンとテーピング用のテープが入っていた。必要最低限のものが入っている感じだ。
「仁」
結賀が呼ぶと、仁は何も言わずに結賀の右隣に座った。
俺は仁の隣に座って、手に持っていたタオルを仁の傷口に当てた。
「いっ!」
タオルを当てると、仁は痛そうに顔を顰めた。眉間に皺ができている。
血が止まると、結賀はコットンに消毒を垂らして、それを仁の傷口に当てた。
「あはは、こりゃあ治るまで料理は禁止だな」
仁を見て、結賀は呆れたように笑った。
「は? 禁止とか無理」
「無理じゃないだろ。料理なんてしたら絶対に悪化するぞ。ミカ、治るまでは絶対にしないように、ちゃんと見張っておけよ?」
俺が未だに仁の家に居候をしているから、結賀はそんなことを言った。
「うん」
「え、ミカ、結賀の味方すんの?」
仁が目を細くして、俺を見つめる。
「そりゃあ、悪化するのは嫌だし」
結賀と顔を見合わせて、俺は作り笑いをした。