一匹狼くん、 拾いました。弐
「ふぅ。とりあえずこれで応急処置は終わりだな」
包帯が巻かれた仁の手を見ながら、結賀は呟く。
「ありがと、ミカ、結賀」
「うん」
「おう! 仁、後でおじさんに電話しとけよ?」
結賀がそう言うと、仁はあからさまに顔を顰めた。
「え、な、何で康弘さんに」
康弘さん? 聞きなれない名前を聞いて、俺はつい首を傾げた。
「なんでって、未成年なんだから、病院にいくなら親が一緒の方がいいからに決まってんだろ」
「……別にこれくらい、病院行かなくたって治る」
額に手をおいて、結賀は呆れたようにため息をついた。
「それはそうだろうけど、病院に行った方が早く治るだろ。病院に行かなかったせいで料理禁止の期間が長くなってもいいなら、別に行かなくたっていいと思うけど」
「料理ができないのは嫌だ。でも康弘さんを呼んだら……」
「あいつは着いてこないって」
あいつ?
「仁、康弘さんって?」
「……俺の義理の父親。前に話しただろ。年賀状を送ってくれたり、誕生日に連絡をしてくれたりする義理の親がいるって」
「あ、料理のDVD送ってくれた人か」
「ああ」
「じゃあアイツって……母親?」
仁は何も言わず、首だけを動かして頷いた。