一匹狼くん、 拾いました。弐
「あ、手当て終わった?」
母さんがドアを開けて、休憩室に入ってきた。
母さんはトレーを持っていて、そこにはパンケーキが乗ったお皿と三人用のナイフとフォークが置かれていた。
「うん、終わったよ。救急箱とタオルありがとう、母さん」
母さんを見て、俺は言った。
「ありがとうございました」
俺に続いて、仁は礼を言った。
「ううん。仁くん気をつけてね。手は料理人にとって、命の次に大事なものだから」
「はい。蘭さん、それって」
パンケーキを見て、仁が呟く。
「うん。仁くんが作ったやつだよ。二人ともまだ食べてなかったでしょ?」
「え、母さん、残しててくれたの?」
結賀と顔を見合わせてから、母さんを見る。
「もちろん。仁くん、二人に食べさせてもいいよね?」
テーブルにトレイを置いてから、母さんは首を傾げた。
「はい。残してくれてたんですね。ありがとうございます。俺、そこまで気が回ってなかったので助かりました」
「ううん、気にしないで。こっちも凄く助かったから。結賀くんも、ありがとうね。仁くん、怪我直ったら、よかったらまた手伝いに来てくれる? 今度はちゃんと、バイトとしてね」
「え、俺でいいんすか」
目を見開いて、仁は言った。
「むしろ仁くんがいいかな。高校生の男の子であんなにスイーツ作りが上手いのは私が知る限りじゃ仁くんくらいだし、仁くんがいると、すごく助かるから」
「……ありがとうございます、考えておきます」
仁はやっぱり、即決で働きます!とは言わなかった。