一匹狼くん、 拾いました。弐
「うん、よろしくね。それじゃ、またね。お大事に仁くん」
「はい」
仁が頷くと、母さんは直ぐに帰っていった。
「仁、食べていい?」
「ああ」
俺が聞くと、仁は素っ気なく頷いた。
パンケーキには、生クリームとアイスといちごが乗っていた。ナイフとフォークを使って、一口サイズにそれを切り、口に入れる。
それは空の上にある雲を食べている気がするくらいふわふわだった。
いちごの甘みが口いっぱいに拡がって、幸せで満たされる。
仁が料理をしてから時間が経っていたから出来たてホヤホヤではなかったけど、それでも充分美味しかった。
「仁、お前天才」
仁を見ながら結賀は言う。
「俺より料理が上手い奴なんてごまんといるぞ。でもま、……ありがとう。ミカ、どう?」
「……め、めちゃくちゃ美味い」
俺がそう言うと、仁は怪我をしてない方の手を頭に当てて、ため息をついた。
「仁?」
仁に顔を寄せて、首を傾げる。
「やっぱダメだな。褒められて嬉しいとは思う。でもそれ以上に何でミカや結賀や蘭さんは褒めてくれるのに、あの母親は俺を褒めてくれるどころか、無視をしたり暴力を振るったりしたんだろうって考えちまう」
それはわかる気がする。俺も、何で義母さんは優しいのに、義父さんはあんな悪魔みたいに怖いのだろうって何度も考えたから。
「みんながみんな優しかったらいいんだけどな」
俺と仁の頭を撫でて、結賀は作り笑いをした。