一匹狼くん、 拾いました。弐

「俺、康弘さんに連絡してくる」

 結賀が頭から手を離したところで、仁は言った。

「あ、する気になった?」

「……まぁ。あいつには会いたくないけど」

 低くて、元気がなさそうな声で仁は返事をした。

「会わねぇよ、大丈夫」

 結賀は首を振って、仁に笑いかける。

「確信もないのに言うなよ」

「会ったとしても、仁があいつに何か言われたり暴力振るわれそうになったりしたら俺とミカで全力で守るから。な?、ミカ」

「う、うん。守れるように頑張る」

「……ありがとう」

「おう。じゃあ、せっかく江ノ島来たんだから明日一日くらい観光してから、康弘さんと合流して一緒に病院に行くか」

「観光?」

 観光なんてしたことなかったから、俺はつい聞きかえした。

「ああ。ミカしらす丼とか食ったことないだろ? だから食べに行こう」

「しらすって、魚のしらす?」

「ああ。生しらす丼と釜揚げしらす丼ってのがあるんだよ。それを食べ終わった後は軽く商店街回ったり海でスノボーや釣りをしたりしようぜ。三人でスーパーで花火買って、それで遊ぶのもいいかもな」

 結賀が俺に笑いかける。言葉を聞いただけで三人で遊ぶ光景が脳裏に浮かんで、胸が暖かくなった。


「う、うん。……俺もそうしたい」

「じゃあ決まりだな。俺が電話してる間に、二人で今日泊まるところ考えといてくれるか?」 

 俺と目を合わせて、仁は笑った。

「うん」

 俺が頷くと、仁は俺の頭を撫でてから休憩室を出ていった。



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