一匹狼くん、 拾いました。弐
「結賀、泊まるのどこにする? ホテルはダメだよな。親の同意ないとだから」
「そうだな。それに仁は大人が嫌いだからホテルは微妙だな。でもそんなこと言ったらどこも泊まれないと思うから、あんま気にしなくていい」
大人が接客してなくて泊まれる場所なんて、せいぜい漫喫くらいしかないもんな。
ふと、緋也の姿が頭に浮かんだ。
「結賀、あのさ……」
「ん、どうした?」
「緋也に電話してみてもいい? 江ノ島に別荘あるって聞いたことがあって」
「ああ、いいよ」
「え、本当に?」
「ああ。緋也の家なら仁も多分平気だと思う。少なくともホテルに行くよりはよっぽど」
「でも、結賀も仁も緋也のこと嫌ってるんじゃ」
「確かに前はミカを緋也にとられたから嫌ってたけど、今はそうでもねぇよ」
「そっか。わかった」
結賀の言葉に頷くと俺は直ぐに緋也に電話をかけた。
《ミカ? 君今まで一体何してたのさ!! 急に学校来なくなったと思ったら、また急に電話してきて》
緋也の大声が俺の聴覚を刺激した。楓が生きてたこととか葵のこととか話してなかったから心配かけちゃったな。
「ごめん、緋也。何があったかは近いうちに直接話すから。緋也、今どこにいる?」
《はぁ。江ノ島の別荘にいるけど?》
「あのさ緋也……俺と仁と結賀、別荘に泊めてくれないか? 今日」
《何、君江ノ島いるの?》
「うん。それで泊まれるところ探してて」
《ああ、いいよ。でも条件がある。ミカ、学校に来なかった理由も江ノ島に今いる理由も、全部ちゃんと僕に話してね? 隠し事は禁止。わかった?》
「う。 ……頑張る」
《よろしい。じゃあ後で住所LINEで教えるよ》
「うん、ありがとう。緋也」
《ん、じゃあね》
俺が頷くと、緋也はすぐに電話を切った。