一匹狼くん、 拾いました。弐
「緋也の別荘来ていいって。後で住所教えるって言ってた」
「おお、マジ? それなら明日は四人で観光に行くか」
「うん。俺も四人で行きたい」
「おっけー」
そう言うと、結賀はドアを開けた。
「あ、結賀」
ドアのそばの壁にもたれかかっていた仁が結賀を見て言う。
仁のスマフォはポケットに入っていた。電話終わったのか。
「仁、緋也が江ノ島に別荘持ってて、そこにみんな泊めてくれるって」
「ん、そうか。ありがとなミカ。俺に気遣ってくれて」
「え?」
「俺がホテルじゃ嫌だと思ったから緋也に聞いたんだろ?」
バレてたのか。
「そうだけど……でもどっちにしろ、俺達高校生だから親の同意ないとホテル泊まれないし」
「まぁそれもそうだけど、ミカがホテルにしなかった一番の理由はそれじゃなくて、俺だろ?」
「……うん」
「それならやっぱ礼言わないとじゃん」
俺を見て、仁は頬を赤らめて嬉しそうに笑った。
「あの仁、結賀……俺緋也に葵のことと本当の親のことは話そうと思ってるんだけど……」
「ん、だけど?」
仁が俺に近づいて、言葉を促す。
「その、露麻と親父にされたことは緋也には話したくないから、その話は……」
仁が俺の背中を撫でた。
「そこから先は言わなくていい。言わなくても十分わかるから。あのことは緋也だけじゃなくて、ミカが嫌だったら廉にも伊織にも話さなくていいから。蘭さん達にも話さなくていい。ミカが話したいと思った人にだけ話せばいいから。な?」
隠し事をするなと言われたのに、隠し事をするなんてとても良くないことだ。
それなのに仁は、それでいいって言ってくれた。
仁がそう言ってくれたことが嬉しくて、瞳から涙が溢れ出した。
「うん、ありがとう」