一匹狼くん、 拾いました。弐
「馬鹿。礼を言うことじゃねぇよ。こんなの当たり前のことだから」
「うん」
俺の涙を拭いながら、仁は笑った。
調理場の方からエプロン姿の父さんと母さんが歩いてきた。
「俊平、仁くん結賀くん、夜ご飯三人の分も作っていいかな?」
母さんが首を傾げて言う。
「え、あ……」
どうしよう。今は十九時前だから、ご飯にはもってこいの時間だ。でも今日知り合ったばかりの父さんと母さんとご飯を食べるのか?
「ミカが好きに決めていいからな。俺達のために無理して一緒にいる必要は無いから」
父さんが俺の隣に来て、フードをとって俺の頭を撫でた。
「あ、ありがとう。えと……」
父さん達と食事をするのは正直怖い。俺はまだ父さん達を全面的に信頼しきれてないし、今日会ったばかりなのに一緒に食べるのは絶対緊張することだと思うから。でも食べたくないわけではないから、本当にどうしたらいいのだろう。
「俊平は、今日東京に帰る? それとも今日はどこかに泊まるの?」
母さんが俺を見て言う。
「……友達の家に泊まるつもり」
「そしたらその友達も呼んで、海のそばでバーベキューでもしようか。お店閉めて」
「え」
思いがけない提案に驚いて、つい声が漏れた。
「嫌?」
慌てて勢いよく首を振る。
「嫌じゃない。……お、俺もバーベキューしたい」
バーベキューなら母さんと父さんとばかり話すことはないだろうし、きちんとした食事の場じゃないから緊張もしない気がした。それになにより、バーベキューなんてしたことないからとても楽しそうだと思った。
「そう、よかった。じゃあみんなで、用意しようか」
「うん! ありがとう、母さん!」
俺が頷くと、母さんは嬉しそうに頬を赤らめて笑った。