一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁、信用するもんじゃないなんて言うなよ。お前が一番、親を信頼したいと思っているんだから」
「やめろ、気色悪い。……俺はやっぱり親に期待なんてしねぇ」
仁は結賀の言葉を真っ向から否定した。
父さんと母さんは精一杯仁の説得をしてくれた。でも俺が義親にされたことを話したから仁は今、余計大人が嫌いになってるのだと思う。
あのことを話さない方がよかったのだろうか。いや、話してくれてありがとうって結賀に言ってもらえたし、さすがにそれはないか。
「みんなー、飲み物入れたわよ」
テーブルのそばにいた母さんと父さんが近づいてきた。
「あ、母さん」
「仁くん結賀くん、ミカにお肉の焼き方教えてくれる?」
「「はい」」
笑いながら、仁と結賀は返事をする。結賀はちゃんと笑っていたけど、仁は作り笑いをしているように見えた。
「ありがとう、二人とも」
父さんは笑って、結賀と仁の頭を撫でた。
「あ、君がミカの友達?」
「え、嘘、美澄蘭さん? うわ、それに悠介さんも!! なんでここにいんの!?」
瞳を信じられないくらい見開いて、緋也は驚く。
「……緋也知ってたのか?」
「知ってるに決まってるよ! 二人とも超有名だし!」
「ふふ。ありがとう、緋也くん?」
「あ、城島緋也です」
「そう。初めまして、ミカの母親の矢野蘭です。よろしくね」
「同じく父親の矢野悠介だ。これからよろしくな」
「嘘! ミカって芸能人の子供だったの!?」
ギャルみたいなテンションで、緋也は叫んだ。
「うん。俺もそう知ったのはつい最近だけど」
「へぇー、そうなんだ。じゃあ整形もされてなかったんだ? 元が良いから」
「うん」
「よかったじゃん」
「うん、そうなんだけど……まだフード取る気になれなくて。虐待でできた傷を隠せるし、被っていた方が安心するから」
「そうなのね」
母さんが俺の髪を触りながら言う。
「うん。ごめん、母さん父さん。俺、自分の顔が嫌いなわけじゃないんだけど、ずっとこの顔は作り物で、そのせいで商品って言われてると思っていたから」
「そんな気にしなくていいわよ。急に考え方を変えることなんて無理だしね。私や悠介のことも少しずつ受け入れたらいいから」
俺の頬を撫でて、母さんは笑った。
「うん、ありがとう」
母さんの腕を両手で握って、俺は笑った。