一匹狼くん、 拾いました。弐


「……俊平、何食べたい?」

 その言葉を聞いて、びっくりした。食べるものを選んでいいなんて言われたことなかったから。

「えっ、何でもいいの?」

「ええ。こんなとこ滅多に来ないんだから、好きなの頼んじゃいなさい!」

 元気よく母さんは言う。

「……母さんは、俺が脂っこいのとか頼んでも怒んないの?」

「怒んないわよ! でも、そうね。確かに、急にこんなこと言われても戸惑うわよね。……今まではあの人が俊平の食事決めてたものね」

「……うん」

 俺はチキンとか、ピザとか、グラタンとかそういう油っこいものをほとんど食べたことがない。

 油っこいのでたべたことがあるのは、せいぜい学食で売ってたコロッケとかメンチカツのパンくらいだ。

「何か、興味あるのとかない?」

「……ピザ食べたい」

 親父がいたら、頼みたいって言うだけで絶対に殴られている食べ物を、恐る恐る口にする。
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