一匹狼くん、 拾いました。弐
「ミカ顔真っ赤だな」
俺の頬を触りながら、仁は笑う。
「う」
恥ずかしくなって、俺は慌てて顔を伏せた。
「よかったな、親といるのが悲しくなくなって」
仁の瞳から、涙がこぼれていた。
「うん。ありがとう、仁」
岳斗が死んでから、親と生きるのが辛いと思っていた俺を一番支えてくれたのは仁と葵だ。仁もそれがわかっているから、俺のことを想って泣いてくれたのだと思う。
「ミカまで泣くなよ。……よかった、本当に」
俺の瞳から流れている涙を拭って、仁は笑った。
「仁、ミカ、大丈夫?」
俺と仁を見て緋也は尋ねた。
「ああ、平気」
「うん」
「じゃあそろそろ僕の別荘に入ろうか」
そう言って、緋也は別荘のドアを開けた。
「凄!」
別荘に入った途端、俺は声を上げた。
二階建てで、一階にはキッチンダイニングとリビングとトイレ。二階にはトイレとジャクジーとベランダがあった。窓は全てスタンドグラスで、ジャクジーは四人で入ってもキツキツにならなそうなくらい広い。ダイニングとリビングも、十人いたらやっと狭く感じるのではないかってくらいゆったりとしている。
「凄って、ミカの前の家もこんくらい広いでしょ?」
俺を見て緋也が言う。俺の義親はクソだけど画家としての能力はあるから、確かにそうなんだよな。でも……。
「うん、広い。……でもあそこは、俺にとっては牢獄だから。そうじゃないここの方がよっぽど広く感じる」
「確かに。ミカの義親が昔住んでたのとか今は露麻が住んでることとか考えたら、あそこは良くない感じするよなぁ」
「本当にそうだよな」
結賀の言葉に、仁はしっかりと頷いた。
「旦那様、お帰りなさいませ。お風呂はもう湧いておりますよ」
2階にいたら、魁斗が緋也に声をかけた。
「うん、ただいま。ありがとう」
「お久しぶりですミカ様、仁様、結賀様」
俺と仁と結賀を見て、魁斗は深く頭を下げた。
「「……久しぶり」」
「久しぶりー!!」
仁と俺の声が被った。