一匹狼くん、 拾いました。弐
「お帰りなさいませ旦那様。スイーツ食べますか?」
五人でキッチンに行くと、そこには緋也のメイドの汐美がいた。
「スイーツ?」
「はい。……夕飯は不要だとお聞きしましたが、せめてデザートだけでもと思って作らせていただきました。今は不要でしたら冷蔵庫に入れておきますが、どうしますか?」
「ありがとう、食べるよ。今日のデザートは何?」
汐美にお礼を言っているところなんて初めて聞いた。前に緋也の家に来た時はもっと態度悪かった気がする。
「フォンダンショコラでございます」
「フォンダンショコラっ!?」
緋也より先に仁が反応した。それも、だいぶ大きな声で。たぶん甘党でパティシエ志望だから、反応したのだと思う。
汐美は目を丸くして仁を見ていた。
「あ、えっと……」
俺の隣にいる仁の顔がみるみるうちに赤くなっていく。耳まで赤くなった。仁は慌てた様子で顔を隠した。
「ふふ。皆さんの分もありますけど、食べますか?」
「ああ、食べる! ありがとな、汐美!」
仁の肩に腕を乗っけて、結賀は笑った。
「……フォンダンショコラって何?」
「……チョコレートスイーツ。柔らかいチョコケーキの中に、とろとろした液体状のチョコレートが入っているもの」
俺が聞くと、仁は小さな声で教えてくれた。顔はまだ隠したままだ。
いたずらをする幼い子みたいに歯を出して笑ってから、結賀は仁の耳に息をふきかけた。
「ひゃ!!」
仁の口から女みたいな声が出た。
反応がおかしくて、俺はつい口角を上げて笑った。