一匹狼くん、 拾いました。弐
「お前の好きにすればいいいよ。あいつ聞き分け良いし、お前がさんざん悩んで出した答えなら、受け入れてくれると思う。だから、迎えに行くも行かないもお前が決めろ。な?」
「……うん」
「じゃ、飯にするか! どうせろくに食ってないんだろ?」
俺の頭から手を離して、笑って葵は言う。
「葵、店は?」
「もう閉めた。バイトのやつに閉店時間まで任せておくわけにもいかないし」
「……えっ、でも」
予想外の返答に驚いて、俺は思わずノンアルコールの缶を落とした。
「はぁ……。お前がそんな状態なのに、出来るわけないだろ?」
ため息をついて、葵は缶を拾う。
「ごめん」
「いいよこんくらい。飯、何がいい?」
物干し竿にかけてある雑巾で床を拭きながら、葵は俺を見上げる。
「食欲ない」
もう一つあった雑巾で床を拭くのを手伝いながら、俺は小さな声で言う。
「でも食わないと倒れるだろ。ただでさえお前痩せてんだから」
顔をしかめ、葵は俺の痩せギスの腕を掴む。
「まるで父親だな」
ほんの少し笑って、俺は言う。
そう思うくらい、世話焼いてくれる。
「あんなクソ親と一緒にすんな」
「違う。……理想の父親ってこと」
「じゃあ高校卒業したらここで働くか? お前、大人は俺以外誰も信じらんないんだろ?」
首を傾げて、葵は言う。
「……いいのか?」
「ああ、いいよ。仁も雇うか。あいつも大人信用してないみたいだし」
「……結賀達は?」
「お前が一緒にいたいってんなら雇うよ。店員が全員イケメンなBARとか言われて、繁盛しそうだし」
「えっ、じゃあ俺も接客すんの?」
「お前は厨房でカクテルでも作っとけばいいよ。忙しい時は接客してもらうかもしんないけど、とりあえずはそれで十分。接客させるとしても、常連が座るカウンターしか頼まないから」