一匹狼くん、 拾いました。弐
風呂から出ると、俺は階段を降りて1階に行った。
「……おせーよ、ミカ」
BARのカウンター席に座っている仁が、俺を見て笑う。
「……仁? 何で」
「俺らもいるんだけど」
仁の隣に座っている廉が、顔を顰めて不服そうに言う。
「よっ、ミカ!」「やっほー!」
廉の隣に並んで座っている結賀と伊織も、笑って声をかけてくる。
「……お前ら、なんで」
カウンターの席から立ち上がると、仁は俺の両肩を掴んだ。
「なんでって終業式来ないだけならまだしも、お前がLINEも返信しないで、電話も無視するからだろうが!
どんだけ心配したと思ってんだよ、このバカが!!」
耳を勢いよくつんざくくらい大きな声を出して、仁はまくし立てる。
「……もういなくなんなよ、頼むから。嫌なんだよ、ミカがいないのなんて」
涙を流しながら、仁は俺を抱きしめる。
「……ごめん」
「ごめんじゃねーよ、本当に」
俺の胸に顔を押し付けて、仁は泣く。
「ククッ。仁はミカが大好きだな」
椅子から立ち上がると、廉はそう言って仁の頭を撫でた。
「うるせぇ!!」
また大声を出して、仁は言う。
胸が締め付けられた。……自分はゴミ以下で、クズで、大事にされないのが当たり前なんだって、そう思って生きてきた。そう思わざるを負えない環境にいたし、毎日商品だって、物だって親父に言われていたから。
お前らはそんな俺の価値観を、簡単に否定するんだ。……ゴミじゃないって、心配する価値があるって、そう言ってしまうんだ。……俺がどんなに、自分をそう思ってなかったとしても。