一匹狼くん、 拾いました。弐
「そっか……」
仁がホットチョコレートを持ってくる。
「ほら」
俺がソファの上に座り直すと、仁は笑ってホットチョコレートの入ったマグカップを渡してくれた。
「……ありがとう」
「ん」
一口飲むと、甘いチョコレートの味が口に広がった。
「……仁は、母親と仲直りしたいとか思う?」
「……思わねぇなぁ微塵も。一人暮らししてから電話のひとつもよこさねぇし。誕生日も年明けもクリスマスも電話もメールもくれやしねぇ。せいぜいくるのは母親と再婚した相手が書いたと見るだけでわかってしまうハガキだ。……俺と向き合おうとしてるのはあの女じゃなくて、あの女が再婚した男なんだよ。……そいつからはクリスマスの電話も年明けの電話も誕生日の電話も来る。ここまで愛がないと、もはや笑えてくるよな」
俺は何も言わず、顔を伏せた。
「……まぁ、でも俺は大丈夫。親からの愛がなくたって生きてけるし。華龍のみんなと、お前と葵と一緒なら生きてける。……ミカもそう思わねぇ?」
「……そう、だな」
一理ある。親からの愛がなくても、きっと華龍となら生きていける。……愛されないのは寂しいけれど。