一匹狼くん、 拾いました。弐
「で? 何の用だ?」
「……あのさ、葵は本当に楓の兄なんだよな?」
「は? 今更何言ってんだよ? そうに決まってんだろ」
葵は眉間に皺を寄せて、言葉を返した。
「……そうだよな」
俺は小さな声で頷いた。
「証拠は? 立花の兄だって証明できるか?」
仁が葵を見つめて、大きな声で言う。
「……証明?」
「葵、免許見せろ」
仁は低い声で言った。
「は? なんでそんな個人情報晒さなきゃいけないんだよ」
葵は困惑した顔をして、個人情報を隠そうとした。
「……気になったからだ。逆に聞くが、なんで個人情報を知られるのをそんなに嫌がるんだ? ダチなのに、なんで隠そうとすんだよ? 」
「はぁー」
葵は深いため息をついてから、ズボンのポケットから財布を取りだして、その中から背面が白いカードのようなものを抜き取った。
……免許証か?
葵は表面を上にして、それをテーブルの上に置いた。
その運転免許証は、名前が【立花 葵】ではなかった。
それは、【三田部 葵】という人の運転免許証だった。
言葉が出ない。免許証の写真は葵なのに、苗字が全然違う。
……葵は、 俺を騙してたのか?
「どういうことだ、葵!」
仁が椅子から立ち上がって、葵の腕を掴んで叫んだ。
「……仁、いい。ありがとう。ここから先は俺が聞く。……葵、ちゃんと説明してくれるよな?」
俺は腕を掴んで仁を椅子に座らせてから、葵を見た。
「……ああ、ちゃんと説明する」
葵は俺の顔を見て、作り笑いをして言った。