一匹狼くん、 拾いました。弐

「……警察を呼ぶのに反対しなかったのは、反対したら嘘がバレると思ったからか」

 仁が冷たい声で言う。

「……ああ、そうだよ。 軽蔑(けいべつ)したか?」

 仁は葵の胸倉を掴んだ。

「……お前は最低だ。下衆(げす)だよ、下衆。最悪だよ、本当に。心の底から軽蔑する」

「……悪い」

 葵は小さな声で言った。

「ミカ、大丈夫か?」

 何も言わない俺の顔を、仁が覗き込む。

「……葵、俺は葵のことを本気で親友だと思ってた。……めっちゃ頼りにできる最高の兄さんだと思ってた。……本気で葵が父親だったら良かったなって思ってた」

「……ああ、知ってる。そう思ってもらえるようにようになりたいって思ってたからな。……ごめんな、銀」

 俺は何も言わず、葵がいる方に回って、キッチンのそばのドアを開けた。

「銀、待って」

 葵が俺の腕を掴んだ。

 仁が俺と葵の間に割って入ってきて、俺の腕を掴んでいた葵の手をとる。

「お前に、ミカを引き止める資格あんのかよ。……葵、俺も華龍も、もう店来ねぇから。ミカもここには来させない。高校卒業したら一緒に働くってのもナシだ。もう全部終わりだよ。この裏切りもんが」

 葵は何も言わず、唇を噛んだ。

「帰ろう、ミカ」

 仁が葵の手を掴むのをやめて、俺の頭を撫でて、耳元で囁く。

「……うん」

 俺は目の前にあったドアを開けて、店を出た。

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