一匹狼くん、 拾いました。弐
結賀の部屋は仁と同じ1DKの造りになっていて、玄関のそばにダイニングとキッチンがあって、その奥に寝室と風呂場があった。
部屋には、親も兄弟もいなかった。
「……結賀、親は?」
兄弟がいないのは一人っ子だからだとしても、こんな時間なのに、なんで親が二人とも居ないんだ?
「あー、親父は仕事が夜勤で朝に帰ってくる。母親は外で親父以外に男でも見つけたのか、五年くらい前から家に帰ってきてない」
そういって、結賀はダイニングをとおりすぎて、キッチンに行った。
随分さらっととんでもないことを言われた。内容が内容なだけに、軽い調子で言われるとかなり違和感がある。
「……結賀、言い方軽すぎ」
仁がダイニングの中央にあるテーブルの周りにあったクッションの上に座ってから、結賀にツッコミを入れる。
俺は仁が座っているところのそばにあったクッションの上に腰を下ろして、二人の会話を聞いた。
「だってもう五年だぜ? 親がいなくて悲しいなんて想い、とっくに忘れたよ」
飲み物の用意をしながら、結賀は笑って仁に言葉を返した。
――作り笑いだ。
本当は辛いのに、それを隠している。
きっととっくに忘れたのではなくて、もう期待をしないことにしただけなのだろう。
仁はきっとそれが分かっているのに、結賀を想って、わざと気づいてないフリをしている。