一匹狼くん、 拾いました。弐
「はい」
結賀は仁にホットココアの入ったコップを渡し、俺にオレンジジュースの入ったコップを渡してくれた。
「サンキュ」
「……ありがとう」
俺は仁に続いて、小さな声で礼を言った。
結賀がキッチンに置かれていたコーラの入っているコップをテーブルの上に置く。
「よっ」
結賀はテーブルを挟んで、俺の真ん前のところに腰を下ろした。
「で? なんでこんな夜中に来たんだよ?」
「……葵が裏切った」
「は?」
仁の言葉を聞いて、結賀は目を見開いた。
「……俺は、整形されてないんだって。……俺の父さんの本当の息子は葵で、葵は父さんに失敗作だって言われて、捨てられたんだって。父さんはその後孤児院にいって、そこにいた俺の顔に惚れて、俺の里親になって……虐待をするようになったらしい」
しどろもどろに喋べる。
「えっ……じゃあ、楓の兄ってのは?」
「……っ」
答えられなかった。『そう言えば信頼されると思った』といった葵の姿が頭にこびりついて離れない。……俺はあいつの全てを信じてた。なんの疑いもなく、そうなんだと思っていた。
それなのに。
「そう言えば信頼されると思ったから、嘘をついたらしい」
仁が俺の顔色を伺ってから、結賀に言葉を返した。
「……なんだよそれ。マジでなんなんだよ!!」
結賀が口にした言葉は、俺の心中を表現していた。
本当に一体何なんだ。
なんで今更本当のことを言う?
なんでずっと隠してた?
葵の何が本当で、何が嘘?
父親みたいに優しくしてくれたのは演技なのか? ……それとも、演技じゃないのか?