一匹狼くん、 拾いました。弐
「……ミカ、隠されてたのにはずっと気づいてなかったのか?違和感とか感じなかったか?」
仁が俺を見ながら、遠慮がちに聞いてくる。
「……別に感じてなかったわけじゃない。楓から兄がいるなんて話聞いたことなかったし、それは変だと思ってた。……でも、良い奴だったんだ。
本当の兄かどうかの確信が持てなくてもいいと思えるくらい良い奴だったんだ」
楓が死んで自殺をしようとした俺を止めたのは、岳斗と葵だった。
楓と岳斗が死んで防ぎこんだ俺を励ましたのも、葵だった。
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「ミカ、本当に行かなくていいのか?」
楓の葬式の日。岳斗は俺を式場に行かせようとした。楓は俺が殺したみたいなもんなのに。
「……ああ、行かなくていい。俺は楓にも、楓の親にも合わせる顔ないから。岳斗が俺の分も楓に手を合わせてきて」
病室のベッドの上に足を伸ばして座っていた俺は、首を振った。
「合わせる顔がないわけないだろ!ミカは何も悪くないんだから!」
岳斗が俺の両肩をゆさぶって、思いっきり叫ぶ。
「……岳斗、あんま動かさないで。足に響く」
複雑骨折が治りかかっている足が傷んで、俺は顔をしかめた。
「わ、悪い」
「……岳斗、俺は大丈夫だから、行ってきて」
「……分かった」
岳斗は俺の言葉に頷いて、病室を出て、式場に向かった。