一匹狼くん、 拾いました。弐
「はぁ……」
葬式が終わると、俺は一人で楓の式場にいった。
だが、中に入る気にはなれなくて、式をやる建物の裏手に隠れて、岳斗を待っていた。
「なんで式場に入んないんだよ。お前、楓の彼氏だろ?」
式場の近くにいた男が俺に気づいて、首を傾げて聞いてくる。
男は紺色の髪で、つり上がった瞳をしていた。
俺が彼氏なのを知っているから、たぶん楓の親戚か知り合いなんだと思う。
……彼氏か。
そうだって自信を持って言えたら、どんなによかったんだろう。
俺なんかが彼氏じゃなかったら、楓はきっとあんなことになっていない。それなのに、彼氏だなんて自信を持って言えるわけがなかった。
「……うっせぇ。俺には入る資格がないんだよ」
俺はただ、男を罵倒した。
「……なんでだ?」
俺のせいで死んだからだと、言えなかった。
口に出せなかった。
「はぁ。そもそも入る資格ってなんなんだよ。たかが式場に入るのに、なんで資格が必要なんだ?」
「うるさい。あんたに何がわかるんだよ」
「分かりたくもねぇよ。入る資格がないとかそんなめんどくさいことを考えて、大好きな女の葬式に参加しない奴のことなんて」
「……っ!」
俺は唇を噛んで、拳を握りしめた。