一匹狼くん、 拾いました。弐
「俺の家来い。服貸してやるから」
望から手を離すと、葵は俺の腕を摑んだ。
「えっ」
「さっさと行くぞ」
葵が戸惑っている俺の腕を引いて歩き出す。俺は慌てて後を追った。
連れてこられたのは【White Cat】というBARだった。
「いっとくけどここ、見ての通り俺の実家じゃないから、親とかはいねぇよ」
「……なんでBARなんだ?」
首を傾げて俺は尋ねる。
「最近始めたんだよ。二階が俺の部屋になってんだ。タオル取ってくるから、そこで待ってて。……風呂も入ってていいから」
葵は俺を入り口まで通すと、すぐに二階へ行った。
「ん」
「……ありがとう」
二階から戻ってきた葵が、俺にバスタオルを渡してくる。俺は葵に礼を言ってから、それで身体を拭いた。
「さっきはなんでよけようとも、拳を掴もうともしなかった?」
「……あいつのいったことが図星だったからだよ。岳斗は俺が死のうとしなかったら、絶対に死ななかった」
「それがお前に紅茶をかけていい理由にも、お前を殴っていい理由にもならないだろ!」
葵は声を大にして叫んだ。
「それはそうだけど」
「はぁ。たっく。あいつのせいで風邪でもひいたらどうすんだ。もっと自分をいたわれよ」