一匹狼くん、 拾いました。弐
「……だって」
仁が小さな声で言う。
「ん、だって?」
結賀は落ち着けとでも言うかのように仁の頭を撫でながら、首を傾げた。
「だってそいつ、ミカが弱っていたのを利用したんじゃねぇか。弱っているミカを兄なんて体のいい嘘で信頼させた」
仁の言葉が、毒針みたいに突き刺さる。
俺は、葵に利用されたのか?
「……仁、そんな言い方すると、ミカが傷つく」
「そんなのわかってんだよ! でも俺は、そうとしか受け取れねぇ」
俺は何も言わず、顔を伏せた。
「……ミカ、葵が嘘をついたのは、俺も仁と同じ理由なんじゃないかと思う。でもさ、葵がミカに死んで欲しくないって言ったのは本心じゃないかな」
「……本心」
俺はただ結賀の言葉を繰り返した。
「俺は本心だと思いたいよ。だって生きるのに投げやりだったミカを奮い立たせたのは俺ら華龍と、葵と、緋也じゃん。そうだろ?」
そういって、結賀は俺の頭を撫でた。
「……うんっ」
俺は零れそうになった涙を必死で堪えて頷いた。
……信じよう、葵を。
俺が整形されてないことや、楓の兄だって嘘を吐いたことはまだどうすればいいかわかんないけど、少なくともアイツが俺を生かそうとしてくれたのは、本心だと思いたい。