一匹狼くん、 拾いました。弐

「……結賀、風呂借りる」

 仁は結賀の言葉を肯定も否定もしないで、ただそういった。

「いいけど、湯船のお湯沸いてねぇよ? 沸かす?」

「……いい」

「ん。じゃあ着替えとバスタオルは後で持ってくから、いってらっしゃい。身体洗うタオルの場所はわかるだろ?」

「ああ、わかる。じゃ」

 そういうと、仁は立ち上がって、風呂場の方に向かって行ってしまった。

 俺は何も言わず、目の前にあったテーブルに置かれている飲み物を飲んで、どうでもいい雰囲気を装った。

 仁を気にしている感じをあからさまにみせるのは良くないと思ったから。

 ――ドンッ!

 風呂場の方で、大きな物音が聞こえた。

「えっ、何」

「あー、仁が壁蹴ったわ。たっく、あいつは自分の家じゃないってのに」

 そういうと、結賀は急いで着替えとバスタオルを取りに行った。

 自分の家でも壁を蹴るのは良くないと思うんだけど。今日はもう、葵の嘘が発覚した時から仁の様子が可笑しくて、俺は正直なにがなんだかわからない。

「ミカ、ちょっと仁が風呂出るまで二人で話さねえ? もう一時半だし、眠くなければだけど」

 結賀は着替えとバスタオルを風呂場に持っていった後、俺に声をかけてきた。

 話す内容はいうまでもなく、仁のことだろう。

「……うん。仁のこと、知りたい」

 そういって、俺は首肯した。
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