一匹狼くん、 拾いました。弐
「おはー。二人とも早いな」
八時半頃に、結賀が窓を開けて、ベランダに入ってきた。
「……おはよう」
俺は結賀の方に振り向いていった。
結賀はマグカップが三つ置かれたトレイを持っていた。
「はよー、お寝坊さん。ココアどれ?」
仁は結賀を茶化した。
「一番左。俺が遅いんじゃなくてお前らが早いんだろ。この不眠症共が」
「うるせぇ。悪かったな、誰かさんと違って寝つきが悪くて」
ココアが入ったカップを受け取りながら、仁は毒づく。
仁と結賀の絡みが、廉と結賀の絡みと近い感じがした。まぁ廉と結賀の二人だと今よりもっと騒がしくなるから、実際はそんなに近くないかもしれないけど。
「ミカ、風呂はさっき沸かしといたから。そんで、ミカの飲み物は真ん中」
「ありがとう」
そういって、俺は真ん中のを手に取った。どうやら、俺のはオレンジジュースみたいだ。
「げっ! これコーヒーじゃねぇか! お前わざとやっただろ!」
仁はマグカップの匂いを嗅いで、声を上げた。
「……残ってんのがココアだろ。しかもゴディのミルクココア」
トレイに残っているマグカップの匂いを嗅いでから、仁は結賀を睨みつけた。
ゴディっていうのはチョコレートのメーカーのことだ。そこの商品はスーパーなんかで売ってるチョコレートよりも数百円値段が高くて、その分めっちゃ美味い。