一匹狼くん、 拾いました。弐
――ガチャ。
「ただいまー」
「あ、父さん帰ってきた!俺行ってくる!」
そう言うと、結賀は早歩きで寝室を出て玄関の方に言った。
「ミカ、俺らも行こうぜ。挨拶しないとだし」
そういうと、仁は飲み干したココアをトレイに置いてから、玄関に向かった。
「うん」
俺はジュースの入ったコップをトレイの上に置いてから、仁の後を追った。
「……おかえり、父さん」
結賀が父親にいった。
「ああ。ただいま、結」
結賀の父親は笑って言った。
結賀の父親は身長が百七十くらいあって、二重の垂れた優しそうな目をしていた。
鼻筋はすっと通っていて、左目の下にある泣きぼくろが印象的で、笑うと出るえくぼが少しだけ青年っぽい。
結賀の親だから歳は既に少なくとも三十代後半くらいになっているはずなのに顔には髭が一本も生えてなくて、白髪も見当たらない。
――清潔感のある素敵な親なんだな。俺の父親とは全然違う。
「お邪魔してます、おじさん」
「……お邪魔してます」
俺は仁の後に続いて、結賀の親に挨拶をした。
「仁くん! いつも結がお世話になってるね!君は?」
「……三上です」
「三上? あ、もしかして君がミカくんか? 結から色々話は聞いてるよ。身体は大丈夫かい? 」
「……はい、大丈夫です。」
身体は、な。心は全然大丈夫じゃない。
「そうか、それならよかった。今日はゆっくりしていってね」
「……ありがとうございます」
俺は小さな声で礼を言った。