一匹狼くん、 拾いました。弐
俺は風呂から出ると、髪にタオルをかけた上からパーカーのフードを被って、ダイニングに戻った。
「ミカおかえり……いや、いくらなんでもそれ顔隠しすぎじゃね?」
テーブルのそばに座っていた結賀が俺の方に来てフードを取ろうとする。
「やめろ」
俺は一歩後ろに下がって、低い声で言った。
「悪い。まさかそんな嫌がると思ってなかった」
「別に」
「結賀、おじさん起こしてきて」
サラダの入った皿を持った仁が言う。
「ああ、わかった」
結賀は俺から離れて寝室に行った。
「ミカ、今のは」
そういって、仁が肩をすくめる。大方、態度が悪いって意味なんだろう。
「うん、分かってる」
「ならいい。ミカ、これ運ぶの手伝って」
そう言って、仁が俺をキッチンに手招きする。
「え、これ、仁が作ったのか?」
キッチンに置いてある皿の上には、ロールパンにウインナーとキャベツを挟んだものや、バターロールにたまごを挟んだものが処狭しにあった。
「ああ。小麦粉が多めにあったから、ちょっと本腰入れて作ってみた。つっても、ただのホットドッグだけど」
「え、もしかして、パンから作ったのか?」
「ああ。ミカがスイーツ食いたいって言ったから、とりあえずスイーツじゃなくても手作り出来そうなのをと思って。ごめんな、スイーツじゃなくて」
「いや。……すごいな。美味しそう」
「そうか? なら作った甲斐あるな」
仁が歯を出して嬉しそうに笑う。
本当に料理すんの好きなんだな。……やっぱ、仁にはパティシエになって欲しいな。