一匹狼くん、 拾いました。弐
ホットドッグがたくさん乗ってる皿をダイニングのテーブルに運んでいると、結賀と結賀のお父さんが部屋に戻ってきた。
「いい匂いだな。え、仁くん、もしかしてパンを作るとこからやったのか? 凄いな!シェフになれるんじゃないか?」
コップに牛乳を注いでいた仁の手が止まる。
「……そんなことないです。ホットドッグなんて大した手込んでませんし」
仁は我に返ったように、牛乳をまた注ぎ始めた。牛乳を注いでいるその手が、震えていた。
「いやいや、そんなことないだろ!」
「父さん!」
結賀が、大声を出した。
次の瞬間、仁の手からコップが滑り落ちて、牛乳が床にこぼれて、コップが割れた。
「あっ、すっ、すみません」
「仁、いい。俺、片付けとくから。寝室行ってろ」
結賀が仁の隣に行って、仁の背中をさすりながらいう。
「……ごめん」
そういうと、仁は走って寝室に行った。
……ダイニングを出る仁の目は、潤んで見えた。
「結賀、手伝う」
「いや。片付けは俺と父さんでやるから、ミカ、これにココア注いで、あいつに持っててくれるか? そんで、話聞いてやって。飯はその後な。その間に、床片付けとくから」
そういうと、結賀は俺にマグカップを手渡してから、冷蔵庫のそばに行った。
「ああ、わかった」
俺は仁がいつもやってる作り方を思い出しながら、ココアを作った。
「ミカ、あいつのことよろしくな。ちょっと……大変だと思うけど」
そう言って、結賀が俺にトレイを渡してくる。トレイには、オレンジジュースが注がれたコップと、チョコレートやクッキーなどのお菓子が入っている皿が置いてあった。
「ああ」
俺はそのトレイの上にココアが入ったマグカップを置いてから、それを持って寝室に行った。