一匹狼くん、 拾いました。弐

 ホットドッグがたくさん乗ってる皿をダイニングのテーブルに運んでいると、結賀と結賀のお父さんが部屋に戻ってきた。

「いい匂いだな。え、仁くん、もしかしてパンを作るとこからやったのか? 凄いな!シェフになれるんじゃないか?」

 コップに牛乳を注いでいた仁の手が止まる。

「……そんなことないです。ホットドッグなんて大した手込んでませんし」

 仁は我に返ったように、牛乳をまた注ぎ始めた。牛乳を注いでいるその手が、震えていた。

「いやいや、そんなことないだろ!」

「父さん!」

 結賀が、大声を出した。

 次の瞬間、仁の手からコップが滑り落ちて、牛乳が床にこぼれて、コップが割れた。

「あっ、すっ、すみません」

「仁、いい。俺、片付けとくから。寝室行ってろ」

 結賀が仁の隣に行って、仁の背中をさすりながらいう。

「……ごめん」

 そういうと、仁は走って寝室に行った。
 ……ダイニングを出る仁の目は、潤んで見えた。

「結賀、手伝う」

「いや。片付けは俺と父さんでやるから、ミカ、これにココア注いで、あいつに持っててくれるか? そんで、話聞いてやって。飯はその後な。その間に、床片付けとくから」

 そういうと、結賀は俺にマグカップを手渡してから、冷蔵庫のそばに行った。

「ああ、わかった」

 俺は仁がいつもやってる作り方を思い出しながら、ココアを作った。

「ミカ、あいつのことよろしくな。ちょっと……大変だと思うけど」
 
 そう言って、結賀が俺にトレイを渡してくる。トレイには、オレンジジュースが注がれたコップと、チョコレートやクッキーなどのお菓子が入っている皿が置いてあった。

「ああ」

 俺はそのトレイの上にココアが入ったマグカップを置いてから、それを持って寝室に行った。

< 82 / 215 >

この作品をシェア

pagetop