一匹狼くん、 拾いました。弐

「あーあ、立場逆転しちゃったなー。まさかミカが俺を励ましてくれるなんて思いもしなかった。
……ごめんな、ミカも葵のこととかでいっぱいいっぱいなのに」

「ううん。仁にはいつも助けて貰ってるから」

 俺は首を振って、仁に笑いかけた。

「俺、本当にお前のこと助けてる?」

「え、なんでそんなこと言うんだよ?」

「……だって俺、人間不信だから。昨日、思ったんだ。俺はミカに自分の価値観を押し付けたんじゃないかって」

「葵のこと?」

 葵が俺を利用したとか言った時のことだろうか。

「ああ。結賀にだってやめろって言われたのに、俺は葵のことをミカの前でえげつないくらい悪く言って、ミカに自分の価値観を押し付けた」

 俺は慌てて首を振った。

「そんなことねぇよ。仁は何も悪くない。……葵のことをあんなふうに言ったのだって、親のことがあったからなんだし」

「でもミカ、傷ついただろ?」

「……まぁそれはそうだけど、結賀に励ましてもらったし、別に平気」
< 85 / 215 >

この作品をシェア

pagetop