一匹狼くん、 拾いました。弐


「それって結賀がいなかったら平気じゃなかったってこと? はぁ……。やっぱり俺、ミカに自分の価値観押し付けてる。くそじゃんまじ」

「……そんなことねぇよ」

「……人を信じられたらいいのにな。そしたら全部解決するのにさ……本当にダメだよな。夏休み中にどうにかしないとなのに」

 顔を伏せて仁は言う。

「え?何をどうにかするんだよ?」

「……進路。ミカが休んでた時に、担任が夏休み中に日程決めて三者面談やるって言ったんだよ。
 ……俺とミカの家はちょっとわけアリだから、三者面談は担任から俺らへの配慮で夏休み明けにはなったけど、それ以降には持ち越せないらしい」

「……三者面談」

 言われてみればそうだよな。……あるよな、この時期。

「……まぁそもそも俺には面談に来てくれる親がいないんだけどな」
 
 きっと、親がいても来てくれないということだろう。

「……俺も母さんと絶縁したし、来てくれる親いないな」

「……話だけしとけば? そんで三者面談の日だけ会って、終わったらすぐ別れればいいんだよ」

 仁が俺を見ながら言う。

「……母さんに会いたくない」

「なんで? ……もしかして、ミカの母さんは父親の味方なのか?」

「わかんねぇ。……ただ、母さんは父さんのことを『あの人は何も元からあんなだったわけじゃないの』って、父さんはある人を見返すためだけに俺を利用したんだって……っ」

「えっ、本当にそんな酷いこと言ったのか?」

 俺は何も言わず、ただ頷いた。


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