一匹狼くん、 拾いました。弐
「……父さんには画家の友達がいたんだって。そいつが父さんが描いた風景画を盗んで、画商に売ったらしい。父さんはそのせいで風景画を描かなくなって、人物画を描くようになったんだって」
「ふーん、絵を盗まれたのはちょっと同情……しねぇな。それが理由で人物画を描き始めたのはわかるけど、それがミカを傷つける理由にはならねぇな」
「うん、そうなんだけど……母さんは、父さんが俺を傷つけたのにそういう理由があったのも理解して欲しいって。……俺を道具のように扱うくらい、その絵を盗んだ友達を見返すのに必死になってしまったんじゃないかって……」
仁は何も言わず、俺の背中を撫でた。
「ミカの母親も父親も地獄に堕ちればいいのにな。ついでに言うと俺と結賀の母親も、みんなみんな地獄に堕ちればいいのにな。そしたら絶対幸せになれるのに」
「……うん」
あんなことを言われるなんて想像もしてなかった。
神様は無慈悲で、残酷だ。
「なぁ、仁」
「ん?」
「……俺、親父に会いに行きたい。葵が言ったことが本当かどうか確かめたい」
「……それは別にいいけど、俺らも一緒に行くからな?」
「うん」
「いいのか? また傷つくかもしんねぇぞ」
仁が俺の顔を覗き込んで言う。
「……そうかもしんないけど、行かないとスッキリしないから」
「ん、そっか。わかった」
そう言って、仁は俺の頭を撫でた。