一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁、ミカ、部屋片付いたけど」
寝室のドアがノックされたと思ったら、結賀がドアを開けて中に入ってきた。
「結賀。……ごめん、おじさんびっくりしてた?」
仁は結賀を見ながら、申し訳なさそうに手を合わせた。
「ああ、理由説明したら分かったくれたからへーき。仁はもう大丈夫か?」
「……まぁ、一応」
「じゃあダイニング来いよ。ココアは……あっため直すか? ミカが入れたヤツだから」
「え、嘘、これミカが作ったのか? 早く言えよ。それだったらすぐ飲んだのに」
「え、だって仁いらないって」
「ミカが入れたのは別。これは今飲む。ミカ、出来たて飲みたいから新しいの作ってくんない?」
俺が作ったココアを手に取ると、仁はそれを飲みながら、上機嫌な様子で言った。
「……わかった」
俺は頬をかいて頷いた。
「おーけー。仲がよろしいことで。ミカのオレンジは氷入れる?」
「うん。欲しい」
そう言って、俺は結賀にオレンジジュースを手渡してから、仁を横目で見た。仁は俺と目が合うと、ほんの少しだけ口角を上げた。
仁は結賀の冷やかしを否定もしなければ、頬を赤くもしなかった。それがなんだか嬉しくて、俺は少しだけ気分が上がった。
「りょーかい。じゃ、ダイニングいこうぜ」
「ああ」「うん」
仁と俺は結賀の言葉に順々に頷いた。
「仁くん、さっきは本当にすまなかった!」
三人でダイニングにいくと、テーブルの前に座ってた結賀のお父さんが慌てた様子で仁の前に来て、頭を下げてきた。
「いやそんな。謝るのは俺の方です。すいません、取り乱しちゃって」
「いやいいんだよ。大人じゃないうちはね。いっぱい悩んで、前に進みな。だってまだ高校生なんだから」
「……はい、ありがとうございます」
仁は作り笑いをして礼を言った。
「仁、コップ」
「ああ、悪い」
結賀はココアの残りカスが残ったコップを、仁から回収した。
ココアを作ろうと思い、俺は直ぐに結賀のそばに行った。
「ミカ、これコップ」
結賀が俺に新しいマグカップを差し出してくる。
「うん」
俺はそれを受け取ると、もう一度ココアを作った。
「ありがとな。仁の話聞いてくれて」
ココアを作っていると、結賀が話しかけてきた。
「いや全然。……役に立ったかどうかも怪しいし」
「俺は役に立ちまくりに見えたけど? 仁機嫌直ってたし」
オレンジジュースが入ったコップに氷を入れながら、結賀は言う。
「……そうかな」
「そうだよ。ミカは自分を卑下しすぎ。十分役に立ってるから」
「……ありがとう」
俺は笑って頷いた。