一匹狼くん、 拾いました。弐
涙が頬を伝った。
「ミカ食べないのか? ……えっ、ちょっ、なんで泣いてんだっ?」
仁が俺を見てあたふたする。
「……おっ、俺、家でいただきますなんて言ったことなかったから。……いただきますは穏やかな家で言うもんじゃん。俺の家は穏やかとは程遠かったから」
「……ミカ」
「俺、……父さんと笑ってご飯食べてみたかった」
口に出した瞬間、自己嫌悪に陥った。
俺の父親は本当に最低で、最悪な悪魔みたいな奴なのに。それなのに俺は、こんなことを心の奥底で思ってたなんて、本当に嫌になる。
「ミカくん、僕も結も、仁くんも君の父親にはなれないけれど、父親がくれたものとは比べ物にならないようなものを君にあげるから。ここにいるのは君の家族ではないけれど、僕らにとって君が大切な人なのは確かだから、僕らはいつだって君を大事にするから」
俺は思わず結賀の父親を見た。
良い人すぎる、今日出会ったばかりなのにこんなことを言ってくれるなんて。
「……なんで、会ったばかりなのに、そんなこと言ってくれるんですか」
「結が言ってやってって」
「ゴホッ、ゴホゴホっ!! ……父さん、それ言わないでって言ったじゃん」
結賀はコーヒーが器官にでも詰まったかのような大きな咳をした。
「え?」
「ああもう。……バレたくなかったのに。ほら、最近ミカ葵のこととか楓のこととかあって、元気なかったじゃん。それでその……父さんにもしミカが落ち込んで泣き出したら、『俺と仁がミカを大切に思ってることを伝えてやって欲しい』って、言ってたんだよ。直接いうのは告白みたいで恥ずいから」