一匹狼くん、 拾いました。弐
「あんなクソ野郎のことなんか思い出してんじゃねぇよ、バカ」
そういって、仁は俺の頭を小突いた。
「だっ、だって」
「……あいつの分もそばにいるから」
俺の涙を拭って、仁はいう。
「うんっ」
涙流しながら俺は頷いた。
きっと葵とはもう一緒にいられない。
葵はずっと俺にとって最高の父親みたいな存在だった。
でもあいつは俺の父さんの子供で、そのことをずっと俺に隠し続けてたから。
きっとあいつが最初から自分が父さんの子供なのを言ってくれてたらこうはならなかった。
もしそうなってたら、俺と葵はずっとそばにいられた。でもそれは無理だから。葵とはきっともう会うこともないんだろう。
バイバイ、葵……最初で最期の俺の兄さん。
「美味っ」
泣き止んでからホットドッグを一口食べると、トマトケチャップの甘みが口にいっぱいに広がった。ウィンナーはやわらかすぎず硬すぎない感じになっていて、ほどよく炒めたのがよく分かる。
ウィンナーの周りにあるキャベツとレタスから食べるたびにシャキシャキって音がして、とても新鮮な感じがした。
「ならよかった」
「いや本当に美味しいよ、仁くん!」
「……ありがとうございます」
そういって、仁は頬をかいて笑った。