一匹狼くん、 拾いました。弐
「じゃ、片付けするかー」
ご飯を食べ終わった仁が言う。
「じゃあ仁はあれ片付けて。俺滅多に使わないから場所わかんない」
結賀が台所にある小麦粉を見ながら言う。
「おいおいお前の家だろうが。まぁ場所わかるから片付けるけど」
小麦粉を手に取りながら仁は言った。
「ハハ。……どんだけ小麦粉使わないんだよ」
思わず小さな声でつぶやく。
「うっせー。手の込んだ料理なんてつくんねぇんだよ。なぁ、父さん?」
「はは、そうだな。……ミカくん、お皿回収していいかい?」
結賀の父親が椅子から立ち上がって、皿を回収しようとする。
「あ、はい。……俺、コップ集めますね」
俺は皿を手に取って、結賀の父親に渡した。
「ああ、ありがとう。キッチンの流しに入れて置いてくれたらいいから」
「……はい」
俺はテーブルの上にあったコップを集めてキッチンの流しに置いた。
「ミカありがと。洗い物は俺がするから。父さんはもう寝ていいよ」
結賀が俺と父親を見ながら言う。
「ああ、ありがとう」
そういって結賀の父親はまた寝室に寝に行った。多分仕事で相当疲れているのだろう。
「結賀、俺も手伝う」
「ほんと? じゃあ食器についてる泡落としてくれるか?」
「うん」
「ミカゆすいだら俺に食器渡して。濡れてるとこ拭いて棚に戻すから」
「うん。……なんかいいな、こういうの」
自然と頬が緩んだ。
「ん?」
仁が不思議そうに首を傾げる。
「え、何が?」
結賀も俺を見ながら首を傾げる。
「俺誰かとこんな風に協力しあって家事なんてしたことないから、すごく新鮮で……楽しい」
「ああ、たしかに楽しいよな、こういうのって。一人でやるのと、誰かと一緒にやるのじゃ全然違うし」
結賀が笑いながら言う。
「……うん」
俺は小さな声で頷いた。
葵の裏切りがなかったら、こういうことを日常的にやる未来もあったんだろうか。
……みんなで葵の店の手伝いしてみたかったな。
俺は思わず洗っていた皿をぎゅっと握りしめた。
「じゃあ高校卒業したら、華龍のみんなで同居でもするか?」
「え」
仁の急な提案に驚いて、握りしめていた手から力が抜ける。
「そうしたら毎日こうやって協力しあって家事できるし」
「確かに。まぁ廉が常に騒がしそうだけど」
結賀が笑いながら賛同する。
「それはお前もだろ」
「は〜? 心外」
結賀が仁を見ながら声を上げる。
「いつも廉と喧嘩してる奴がよく言うぜ。なぁ、ミカ?」
俺を見ながら仁は笑った。
「ハハ、確かに」
俺は笑って頷いた。
卒業したら本当にみんなで同居したいな。想像するだけで、すごく楽しそう。
みんなで同居をする光景を思い浮かべながらやってたら、すぐに食器の片付けは終わった。